日時:2012年2月4日 13時10分~13時55分
講師:千葉大学教授 小林正弥氏
我々の印刷業は、高度成長経済の恩恵を受け、右肩上がりの成長を続けてきました。その結果、生産性向上の為に機械はコンピュータ化され、従来の職人技術に頼らずとも品質の向上、平均化も手にしてまいりました。その上で生産合理化を推し進め他産業に負けない成長を続けておりました。
が、先のリーマンショク以降、日本の経済は停滞若しくは減退しているのが現状です。様々な外的要因があると思います。それは、直近では、3.11における大震災の影響、欧州危機によるクライアント産業の低迷、逆のぼれば、iPadを代表とするタブレット端末の普及に伴う、電子書類化の波。様々な要因により紙の必然性が薄れ産業全体にその影響が見受けられます。紙を扱うことを中心に事業を構築してきた印刷業界にとって、大異変が起っているといってもいいのではないでしょうか。それは、蝋燭から電球に変わったり、着物から洋服へ、ブリキからプラスチックへと様々な産業が移り変わるように、印刷産業もその時代に入ったのかもしれません。
その中で我々が今後社会に必要とされる企業になる為に必要な事とは何でしょうか?社会ニーズにマッチしている事が最低のラインとなる事は必死ですが、ニーズとは何なのでしょうか。クライアントやコンシューマーにとって、その産業いや、各企業が必要とされる事って何か?一つの答えとしては、サービス。価格もサービスの一つかもしれません、迅速性もそうかもしれない。しかし、日本全国3万社以上ある印刷会社が全て同じ事をすれば、それはそれで決まったパイの取り合いになり過当競争の繰り返しになります。では、何が答えになるのでしょうか?おりしもプリントネクスト2010では、街づくりゾーンにおいて、理性価値から感性価値へと大きなプランニングのもと行いました。代表的な例としては、地域活性を地域資源から行うといった例も挙がりました。
あれから2年。我々の産業は更に厳しくなって、先行きの見通しも明るいとは言いがたい現状。それでも元気な会社は元気に成長を続けている。その違いは何が違うのでしょうか?
今回の基調講演では、企業の存在価値とは何か。を踏まえ、公共哲学の第一人者でもあります、千葉大学の小林正弥教授にご講演いただきます。小林教授は、NHKの白熱教室の解説者でも有り、『これからの正義の話をしよう』の執筆者、ハーバード大学のマイケル・サンデル教授とも交流があり、政治哲学の観点から、今後の社会における企業の存在理由を分かりやすく伝えて頂ます。
講演は、プログラム上分かれておりますが、今回は、基調講演・ワールドカフェ・対話型講義(ソクラテスメソッド)と、3部で1つの講演となっております。これは、今までの壇上から理屈的な話を聞くといった講演と異なり、自分たち自らが考えながら進めていく事で、本当の意味で腹に落とし込んでいくことが出来る設えとなっております。最初の講演では、基本的な考え方を提唱していただき、そもそも企業の価値って何かといった部分をご教授いただき、その後ワールドカフェにて、グループ単位での話し合いを行います。ここでのキーワードは基調講演中の中で選定させていただきます。ここまでが大学で言うところのゼミの部分になります。予め学習した事について、次に対話型講義(ソクラテスメソッド)を行います。日本全国から集まる参加者は、誰一人同じ境遇はありません。地域によって、規模によって、抱えている問題や、認識は違うはず、その意見を発信していただきながら、今後我々の産業にとって必要な事ってなんだろうか。そして時代の変化をどのように感じ、今後どのようにすべきかの指針を自らが感じて、創出いただく事ができる内容となっております。
我々が今考える事、今行動する事、今何が出来るのか、そんなことを深く考えるきっかけになるはずです。
講師紹介
大中会議室501+502 14時05分~15時25分
米国のアニータ・ブラウン氏とデイヴィッド・アイザック氏によって1955年に開発提唱されたメソッド。
知的資本経営に関するリーダーを自宅に招き、リラックスした雰囲気の中で話し合いをする事によって、無機質な会議室では想像も出来ないような、新しい発見や洞察が創造された事に感銘を受け体系立てた会議スタイルです。
つまりは従来の堅苦しい会議スタイルと異なり、「知識や知恵は、機能的な会議室の中で生まれるのではなく、人々がオープンに会話を行い、自由にネットワークを築くことのできる『カフェ』のような空間でこそ創発される」という考え方に基づいた話し合いの手法。
このようなイベントでの基調講演は、上段からの講演に対し『聞く』だけで終わってしまい、イベント終了後にどれだけの時間その情報を共有できたでしょうか?1ヶ月?1週間?1日?講演の租借もないまま忘れていってはないでしょうか?
今回のプリネクは、体験型です。基調講演によって話された内容の中からキーワードを2・3ピックアップをして、そのキーワードに対して、各グループごとに話し合いをして頂きます。見知った顔ではない方々と話す事、そこには企業名も役職も年齢もなくただのメンバーとしてディスカッションをして頂くことで、同じキーワードでも、捉え方や考え方の違いが実は多種多様である事に気が付くはずです。
このディスカッションは、キーワードに対して『カフェ』で行う雑談のようなイメージですのでコーヒーも有りお菓子も御用意いたします。勿論トイレもお好きなだけ。
そしてある程度の時間で、今度は全員シャッフルを行い、また違ったメンバーと先に話したテーブルでの話の共有を先ず行っていただきます。その後またキーワードに対してディスカッションを行い、それを繰り返します。毎回毎回違った発見があるのではないでしょうか。1人で考える事、また会議室で考える事、それとはまったく違った見方や創造が出来るのではないでしょうか。
それが『ワールド・カフェ』スタイル!
ファシリテーター
PrintNext 2012
企画部会
大川 哲郎
大中会議室501+502 15時25分~16時30分
ソクラテスは、弟子たちに鋭い質問を投げかけ、その答えと、また反対の答えに対し、それぞれの弁証を促し、知覚力や洞察力を引き出す方法をとったとされ、対話型にすることで一方的な知識の受け渡しではなく、自ら考えさせました。現在はハーバードのマイケル・サンデル教授がその講義スタイルで有名です。日本ではサンデル氏と交流のある千葉大学の小林教授によって実施されており、他大学でも行われるようになりました。
例を挙げると、有名ですが、メキシコ湾で発生したハリケーン・チャーリーは、オークランドに多くの被害をもたらした。その後、通常であれば2ドルの氷が10ドルで売られ、発電機は250ドルから、2000ドルで売られた。
おりしも日本も3.11で帰宅難民が多くでた、交通機関は麻痺し、歩きで帰る道すがら、ある商店が、ミネラルウォーターを150円で販売。そのラベルには、サンプル・非売品と印字されている。
これは、個人のモラルとして正しいのか?それとも市場原理の中で需要に対する供給とし、商人として当然なのか?
といった、相反対するが、各々の立場からすると正しい主張だが実際にどう思うのか?思い思いの意見を抽出して行う講義です。
今回のキーワードは何になるのか?
例えば、企業の存在価値の一つに、顧客に対するコスト的価値、これは避けて通れない命題ですね、コスト削減を突詰めていくと、合理化が当然になり、合理化が進むと自動化かが当然でてくる。ここで問題は自動化されることによっての人員の問題。自動化が進むにつれ人員は必要なくなってくる。そうすると企業の使命の一つに雇用の問題もあるはずだが、その理念はどうなるのか?
この事例で進むかどうかは来て、実際に体験していただかないとわかりません。
我々の産業と同じように受身でいる事を捨て、自らも参加頂き本気で考えていただくことで、今後の印刷、いや会社の未来を考えていけるのではないでしょうか。
今回のプリネクは、体験型のアトラクションであり、インタラクティブでもある、かつて無い自分参加型です。
来て、見て、感じて、考えよう。そして明日につなげよう。